在野の妖怪研究家、化野燐による伝奇小説。
舞台はある学園都市。司書美袋小夜子は、学園内の土蔵で『本草霊恠図譜』という一冊の妖怪図譜を発見する。本を手にした小夜子は、異世界に迷い込み肉体を改造さてしまうという、不思議な幻視体験をする。
本を発見した小夜子を、有鬼派とよばれる集団が襲撃する。『本草霊恠図譜』には、人工憑霊と呼ばれる、人間の妄想から生み出された妖怪を具現化し操作する方法が記されているというのだ。
現在有鬼派が持っている人工憑霊の技術は断片的であり、その技術を完全なものにするは『本草霊恠図譜』が不可欠だという。有鬼派は『本草霊恠図譜』の力を用い、今在る世界を根底から覆すというのだ。
有鬼派の人工憑霊により危機に陥る小夜子。混乱のさなか小夜子の人工憑霊『蠱猫』が覚醒し、小夜子の脳内を一つの命令が走る。―『本草霊恠図譜』を護れ―。
『本草霊恠図譜』を巡り、小夜子と有鬼派の死闘が始まる・・・。
風呂敷は大きいのだが、舞台設定を間違えている気がする。
有鬼派というのは、ほとんどカルト集団のような目的を持ち、かなり派手な行動をとっているのだが、その行動がいちいち学園都市という舞台にそぐわなさすぎる。図書館爆破したり、研究室一個分の学生を戦闘員にしたり。世界征服の一歩は学園からって、「黒いチューリップ」みたいだなあ。
人工憑霊の扱い方も気になる。妄想や怨念の具現化が妖怪の形を取るというのは、妖怪有りきの世界のようなので分からなくもない。しかし、その使い方がスタンドバトルっていうのはどうだろうか。
スタンドバトルがしたいなら妖怪でなくてもいいだろう。
あと今巻を見ている限り、人工憑霊は準備が大掛かりの割に大して役に立たない印象を受けた。世界転覆は難しいんじゃないだろうか。
色々なところが納得いかないけど、ビジュアルイメージは良いんじゃないかと思う。コートのベルトが猫尻尾と重ねるところとか。全三巻ということなので次巻に期待する。