さて、読書会だが課題本のあらすじとかはamazonのレビューでも見てもらうとして、問題となったのは上巻と下巻の乖離だ。上巻は宇宙論や恐竜絶滅の謎、科学者の政治闘争など、ヴェリコフスキー宇宙論を成立させるための手続きに費やされているのだが、下巻は崩壊する地球をサバイバルするパニック小説になってしまっており、上巻と下巻がいうならば全く別のベクトルを向いており、これを是とするか否とするかで意見が割れる。ただ、否定意見が大半を占め、肯定的な人間も条件付な感じであり、ありていにいえば下巻がツマランなんとかせいよ、というところ。
1999年という発表時期柄、「ディープインパクト」や「アルマゲドン」の影響をモロに受けたのではないかという意見が出たが、これが異様に説得力があり頷くばかりであった。「揺籃の星」執筆時ホーガンは還暦間近であり、晩節を汚すという言葉が脳裏をよぎったが口には出さなかった。
レジュメが無かったせいもあるのだろうが、小説内の太陽系の時系列が今ひとつわからず、皆で混乱する。だが、誰も積極的に整理しようとしなかったような気がする。何か投げやりだった。
科学的な問題点については金子隆一氏の解説ですでに大半がツッこまれており、解説を補足する発言はあったものの、さすがにこの小説を擁護する意見は出なかった。とりあえず恐竜に関する記述は現在ではまったく通用しないのは確かだ。
あと、地球の崩壊に関する描写はちとやりすぎだろうという最もな意見が出る。あんなもん誰が生き残るんやと。紀元前にも一回あったって言われたってねえ・・・。
あとは、キャラクターが立っていない、主人公の行動理念がおかしい、ストーリーの組み立てが拙劣、ホーガンのワーストだ、など散々。
否定意見が出尽くしたところで、よかった探しが始まり、いたたまれない気持ちになる。
個人的には斥候を置き去りにする場面や、爆走轢殺が面白かったか。
ホーガン作品はあまり読んでいないのだが、それでも「揺籃の星」がホーガンの中でも底辺に位置する作品だということは想像がつく。ホーガンのシリーズ物は後にいくほど悪くなると評判だが、これが真実だとすると「揺籃の星」はホーガンワースト3かねえ。
設定やガジェットだけを取り出したら、とんでもなく面白いSFが出来そうな気がするんだけど、なんでこうなっちゃったんだろう。
参考:ジェイムズ・P・ホーガンWiki
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