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2004年11月05日

読書:「タマラセ」

tamarase

「タマラセ 彼女はキュートな撲殺魔」 六塚光 角川スニーカー文庫

大学の先輩であるところの六塚光氏のデビュー作。本来なら氏への敬称は「せんせいさん」であるべきなのだが、「せんせいさん」という単語は文字にすると長い上にあまりにアレなニオイを発するので、このブログでは使わないことにします。検索で来た人にマイナスイメージを植え付けても悪いし。まあ、ある特定の層にとっては、好印象となるかもしれないが。


さてこの「タマラセ」、いわゆる異能力アクションものなのだが、最大の売りであるところの「能力」の部分が少し弱い気がした。自分の幽体から武器を具現化し、それを使って戦うという設定からは、やはり「ジョジョ」や「スクライド」を連想してしまうし、それらと比較すると戦いの駆け引きや、能力の使い方において弱いと感じてしまう。

幽体のにらめっこや、タマラセではないと演技する夏月を、佐倉が能力を利用して見破る場面など、うまく能力を使っている場面もある。だが戦闘シーンでは基本的にタマラセは単純な武器としてしか使用されておらず、力と力のぶつかり合いとなってしまっている。そこが少し物足りない。
「タマラセ」ならではという能力の使い方、戦い方。「タマラセ」だから成立する戦いの駆け引き。これが欲しかった気がする。

ただ、これはシリーズ第一弾ということで、分かりやすさを重視した結果だという気もする。実際読者の中に確固たる世界を築いていない状態で、能力を応用した戦闘を繰り広げても、複雑さだけが印象に残ってしまい、面白さは読者に伝わらなかっただろうし。


作品の構成に関しては、きっちりと計算して組み立てた印象があり、過不足なくまとまっている。逆を返せば、あまりにも予定調和であり、こちらの意表をついてくる展開がないともいえる。伏線もきっちり回収しており、小説としてスマートであるのだが、その分パワー不足の感がある。
しかしながら、作品自体の完成度は高く、長所ととるか短所と見るかは、読者の好みに委ねられるだろう。


小説の面白さとして、隙間から滲みでてくる過剰さというものがある。この作品でいうならば、それは明らかに作者のセンスであり、このシニカルなのかブラックなのかよくわからない少し斜め上を向いたセンスは六塚光という作家の大きな武器になりうるものだと思う。
しかし、このセンスは現在のところ、全体の構成から逸脱しない程度に抑制されているような印象を受ける。もっと漏らしても良いと思うのだが。


たらたら書いてきましたが、全体的に完成度は高く、読んで損は無いと思うので、一度手にとって見てください。オススメ。
posted by かかし at 17:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | 感想とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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